すべて哀しい夜は昨日

変わらないものなんてない
時を経るごとに 薄れてゆく 微分されてゆく けれど消えることもない

そうだとした明日には何が待っているんだろう。

生みだしたものの成分を抽出したらきっと、喜びよりも哀しみの方が多い。哀しみはいらないのに、役に立つ。私は哀しみを切り売りする。

私たちは哀しみを忘れていく哀しい生きものだ。でも、それでよかったんだ、きっと。
 あなたは確かにここに生きていた。

死別を繰り返して書き溜めた詩。長い歳月で編み上げた初詩集。全99編収録。


すべて哀しい夜は昨日

一方的に 何も告げず 手の届かないところへ連れていかれた
崩れ落ちる一瞬 さっきまでとは完全に違う、世界
今 目の前で永遠に失われた 私の宝物

いくら叫んでも届かないものがあると知った

そんなことは自分には起こらないと思っていた

私の世界は変わってしまった

指先に想いを宿して撫でていく
かえらないものへ
かわらないものへ
温度をなくす、けれど、すべてはなくさずに
かたちの中からその独特の匂いを放つ
甘くて、つんと、まろいもの
それは向こう側へといってしまえば
何故か思い出せないものなのだけれど
腕に抱くあなたから感じている
いとしいものが腐りゆく
鼻から鼻へとくすぐる 命の、最後の、足あと
そっと、心に、終わりなのだと囁いて
内側から
言葉にできない何かを奪う

         胸を刺す
      これが最後とわかった瞬間
         あなたの感触が波紋を描く  最期を見届けた私は
  その瞳にどう映っていたのだろう
   そう想えば、ほら、
    また、哀しみに火がつく
     終わらない哀しみに
火がつく

あなたがいない世界なんて
あなたがいない世界なんて
あなたがいない世界なんて
              いたくないのに
                               息ができない

 鼓動を感じる   冷たくねじれて
   こんなことも難しい
     何気ない思いつきもちょっとした動作もぜんぶ
  スイッチが切れて     動かない

    私の一部がもぎ取られてずっとずっとどこか遠い場所へいっちゃった
    どうやっても戻らない 欠けたままなんだ
    存在がばらばら に 宇宙 に  広がって  ゆ   く


ここはいったいどこなんだろう
夢の 夢の 中にいる
私はもうさっきまでの 私 じゃなくなった

濁った水は広がる
  深海の底に落ちたのかもしれない
   暗闇が手足を掴んで    目隠しをする
  必死でもがきながら
    水面を目指しているのか
  ただ溺れているのか わからない
            終わりのない息苦しさに 途方に暮れる

 そこへいってしまったらもう何もしてあげられない
  抱きしめたい もう一度 その瞳を覗いて 伝えたい
 
             って、ちゃんと伝わってたかな

おろそかにしてたのに 後悔しても遅すぎるのに
一秒一秒を大事にすればよかった
してほしいことを知っていたのに
後回しにして、そして、もう、絶対に叶わない
変わらずに時は過ぎるのに あなたがいない
あなたがいないと思いながら いるかもしれないとも感じている
痛みが反響して疲れ果ててしまう
やっぱり、あなたがいない

昨日を返して
やり残したことがあるの
そうしたら
今日も明日も変えてみせる
だから 昨日を返して  返して

どうして手に入れたものすべて
いつか手放さなければいけないのか
教えて

      もやがかかっている
       言葉が見つからない
        いつからだろう
       焦点が合わなくなったのは
        こぼれ落ちてゆくのは
         哀しすぎるものばかり
         あたたかい季節もあったのに

何度も明日が来なければいいと思った
そうやって眠ったふりをする
同じ場所を行ったり来たり
世界が終わってしまえばいい
可能性が消えてしまえばいい

  
それなのに    願っても願っても  終わらない

もうすぐ終わる もうすぐ もうすぐ

あっという間に過ぎ去って

いつの間にか終わってしまう

このまま ゆっくり 流れてほしい

あと、ちょっと

もうすぐ今日が終わる

そうしてあってもなくてもいいような一日が終わる

そろそろきっと何も信じられなくなる
随分前から耳を澄まして
いつかの音を聞こうとしている
知らない何か、見えない何かに
慈しむ心があるというのなら
何でもいいから
祈りを目の前でかたちにして

 私と引き換えを救ってください
 痛みの記憶だけでいかせないでください
 ( 届かなかった )
 この命がおさまるように
 私を消して空いた隙間を譲らせてください
 ( 届かなかった )

 なぜ私が選ばれなかったんだ

 からだから抜け出してやっと自由になれたんだ
   寒い日の窓ガラス 息を吹きかけたあの あたたかい白さ 目の前を横切った
  嬉しい
    なのに 呼吸がはやく不規則で
くるしい
 胸が寒い日の息でいっぱいになる

     死よりも
     死ぬほど苦しいほうが
     不幸だ

動かない
眠ってるみたい
冷たくなるのがはやい
私はのけぞる瞬間がいやだ
あまりにも苦しそうで
でも力が抜けたからだは
やさしい感じがする
そのからだの中では
何が起こってるんだろう
 
テレビでは遺伝子が
死にましたと信号を送るらしい
するとからだは、
今までいきいきとしていたからだは
とたんに腐りだす
生命はいきなり逆の道へすすむ
息をしてないのを見ると
私が苦しくなるのに
目の前では
やっと痛みがなくなって
苦しくなんてまったくない顔
やっと、やっと
解放された……いのち?
死んだものをいのちと呼べる?
ただこの期におよんでわかるのは
生きてても死んでても
何も変わらないということ
寂しいのはわかれ
わかれを過ぎたら何も変わらない

 死ぬってなんだろう

 死が教えてくれたのは
 いつか時が来ること
 そういうものだということ
 二度とないということ
 いつまでもは、ない、こと

いとしいものの数が増えるほど
わかれも増える

ひとり
逆風に立ち向かって
希望がほしい
破裂してあふれそう
身体中で叫びたい
痛いくらい
叫びたい
空になってしまうまで

声が出ない

暗闇のその先へ
  信じることをやめて膝を抱える

諦めたら
まっさらになる
痛みは息をひそめて
苦しみは遠のいていく
誤魔化せば、楽になる
引き離したあれこれは
視界の外でうごめいて
ずっとこちらをうかがっている
ねえ、あれこれ
こっちにおいで
抱き寄せれば、きっと
痛みと苦しみと一緒に
いとしさが私を包み込んでくれる
でも、それはとても
とてもとても
とても
しんどい

今日はこんなにいい天気なのにあなたは今日を知らないんだ

もしも世界にあふれている不可思議なものが想いが
      何かを変えられるなら
    別れを必ずなどと大丈夫などと認めないでほしい

始まりはささやかでも
穏やかなあたたかい季節を
   過ごしてしまえば
    終わりには残酷な
手足をもがれる厳しさが待っている       朝の青白い光
ぬるま湯に浸していた心も
ガラスみたいに割れてしまう
幸せをふち取った音色を聞いて
                                 深く苦しむ
奇跡の隣にいる永遠がに微笑んでくれる
       その救いだけが欲しい
姿が動かなく冷たくなってゆく恐ろしさを
         決して瞳に映さないで
     たとえそれが待っているとしても
その時には互いが醒めることのない甘い眠りの中で
      これからを共に歩んでいけるように
     すべての不条理を超えた新しい時の中で
              またいつもと変わらず
    あの季節を過ごしたい  過ごせたらいいのに

名前を呼んだ    返事はない    意味もない

あの日
あの日から、すべて
昨日
昨日に生きて ただ、いる でも

朝に眠りから覚める
今日になったと知って、泣く
泣く

時は前しか向かない
消すことのできない祈りばかりを残して
全てが届くことのないかたちのまま
終わることはない
答えもない
お互いを当たり前だと疑わなかったあの日に
こんなもがれるような想いがあるなんて知らなかった
手を伸ばした
別れの時なんて考えずに
何年も何十年も日々を過ごした後の姿を見たい
世界の果てで今日もまたどうしようもない何かと闘う
あたたかな感触
生まれてきてからずっとこれからも愛おしいあなたなのに
夜の闇に浮かぶのはそうしたあなたではなく
体の冷たい
瞳には何も映らない
闘いたくなんてないのに
闘うことが何かも知らず
後にはいつも朝が来る
それはまた夜を連れてくるのに
取り留めもなくあふれる
つながりながら生かし続ける
もしかすると終わらない苦しみで
いつかは目の前が真っ暗になってしまうかもしれない
その時はその声が聞こえますか
盲目でもその光は見えますか
灯りが守り続けた夜が光となって消えてゆく

待ってと言っても去ってしまう
来てほしくなくても待ってくれない
一方的なこの世界

時が無くなればいいのに

そうすれば追ってくる焦り

終わってしまう儚さ

そしてきっと  続くことのない哀しみ

すべてが消えてしまうのに

奪われたなら返してほしいと思うのはおかしなことじゃない

死んでいるわけでもない
生きているわけでもない
隙間に体を押しやって 休ませてほしい
透明になって やさしい膜で覆って
 補完された 実体のない 何かになりたい

        充分に満たされたら
     また  生まれ変わるから
     きっと 生まれ変わる

現実はあまりに酷く
   当然のように 生きることで傷つけられる
   息を吸う 哀しみを吸い込んで
      吐き出して 誰かを痛めつけている
    知れば知るほど
      世界は安らぎから離れていく
           まるで 生まれた時から
            完璧なガラス玉が
       傷ついて磨り減って いくように

苦しくて
思い出さないようにしていることを
あなたは許してくれますか

奇跡を信じていた
あなたがいなくなるなんて
そんなのは間違っている
あなたが何をしたというの
どうしてあなたなの
誰も答えをくれない
私にはわからない
こんなに壊れやすいものが
世界にはあふれていて
まばたきをすれば
もう違う 何もかも違う

もしこのまま眠りについてもう二度と瞼を開けることがなかったら生きていた今日という日に満足することが出来るのかな

出来損ないの神様が創った方程式
別れの先には永遠がつく
私なら
別れの後に必ず再会を用意する
廻るダンスのように
別れの悲しみは再会のために
死なんて訪れない世界
あなたは死なない
一緒にその世界で暮らそう
いつか私がそんな神様になれたなら
また一緒に暮らそう
暮らそうね

   瞳を閉じて、気配を感じる、その瞬間
    私は、あなたを、抱きしめる
     大好きって、囁くように
 
        限りない想いを込めて

死を目の当たりにすると
生きている感じがする
流されていつの間にかただ活動している行為が
ふっと蘇る速度で
生きていることを知らしめる
死が憎いのに
同じくらい憧れていて
おまけに必要だと思っていた
死が身近にある日は
生きることが輝いている
私は生きている

唐突に 想い描いて 時は 穏やかに 美しく 忘却の彼方にする 
残された気配 感じるのは
                      生

夕暮れの青みがかった紫の空が見たくなって眼鏡を取り出しつけてみる 視界が鈍い なんでだろうとレンズを見れば塩辛いコラージュ ああ 冷たい体を抱き締めて泣いた時のままだ 冷たい闇の明けない夜 あの日の色はそのままこびりついていた
ある日 突然、大切なものを失うと いるものといらないものがくっきりとわかる いるもの以外捨ててしまえと放り投げる そしたら 見えなかったものが見える 瞳の奥の心の穴を覗いてみると 光を集めてピントが合わさり日常を鮮やかに映す 雨上がりの雫 庭の名のない花模様 隣に座る猫の毛並み
なんで今まで見えなかったのだろう なんでこんなに美しいんだろう

 祈りを洗い落とすように( 涙を流す私は受け入れる準備をしているのかもしれない )

目覚めた朝、ほんの少しの間、忘れている

神様どうして って
叫んで、泣いて、声が枯れて、  最後はちゃんとしっくりくる
諦めることを無理やり教えられて
からっぽになって理解する
こういうものなんだ

続いたらつらすぎる
 でも、今のままでもいられない

失う事はたやすい
どんなに両手で大事に抱えようとしても
指の隙間からこぼれ落ちる
少しずつ、時は奪う
守りきれないんだ
立ちすくんでよく見ようとした
こぼれたもの、こぼれていくもの
それでも私は抱える
さっきよりもずっと強く、しっかりと、抱える
はっきりと確かめる
今なら何だってできる気がする
手に取る強い感覚で
この手のひらにはどんなものだって
掴めるだろうと、感じる
ぜんぶこぼれていかなければ何だってたやすい
そう、たやすいんだ

          ふと現れる面影
          遠い世界の扉
          窓は覗けるけれど
          決して開かない
          言葉にならない想いに
          触れられないあなたに
          目を伏せた
 
    届かないものへ
    人は永遠の憧れを抱く
    歳月を重ねて
    降り積もる最果ての鱗片
    窓をずっと眺めていた
 
                   色の消えた世界
                  変わらないようで
               私にはわからないように
           世界はめまぐるしく変わっている

時は止まらない
祈りを乗り越えて
諦めて
いつかここから抜け出せるのかな

       きっと明日も同じ窓を眺めている
              ずっと先の明日は
           何を眺めているんだろう

軌道から少し軸がずれれば
     積み上げた細胞のピースから
           命が崩れてしまう
       私たちは奇跡の上を揺らぎながら
         何も知らずに綱渡りしている

私の大切なものは誰にも渡さない
体中に流れる温もり
肌の奥へ染み込んだいとしささえも
箱に詰めて川へ流そう
私の心は誰にも知らせない
誰も触れられない彼方へ
瞳に映らないやさしさも
川の流れはやがて新しい大地へと
もう決してはばまれることなく
ひっそりと種を育めるように

出会わないのは寂しすぎる
出会ってしまっても こんなに哀しい

ねえ、哀しみの先に何が待っているんだろうね

    あの日、希望が死んだ
    さなぎのまま、死んだ
    私は期待はずれのそれを壊した
    ばらばらになった
    それでも
    何もかもを忘れて
    忘れたふりをして
    そのかけらを拾い集める
    脆く儚いものだから
    またやさしくあたためる

時が経つにつれて夢のようになっていく
本当に居たのかさえぼんやりと
長い歳月一緒にいたのに不思議だね このまま消えてしまうのかな

ただ感触は今もまだ残っている
最後にあんなに覚えておくため触っていたから 
忘れない

               息ができないほど
             哀しみに溺れて
               目を逸らし固く閉じて
           それなのに

 
               知らないふりをして
                    あるがままに流されて
                前を向き
                       いくら私が拒んでも
                                心は歩き出す

 
       そんな私をあなたは許してくれるのだろうか
             私は朝を迎えていいのだろうか
          ただ残されたこの世界で
                 私はそうすることしかできない
 
       息ができないほど
     哀しみに溺れて
   目を逸らし固く閉じて

私は深呼吸する

このまま
忘れてしまうのかな
お願い
どうかそのままで
想い出は想い出のままで
過ぎ去らないでほしい
もうこれ以上奪わないで

私はこわい
    あなたのいない世界で笑顔になることが

 夕陽が遠くの街に沈んでゆく
 今日はどれだけの命が
 明日に想いを馳せたのだろう
 もう来ない明日に

 あなたに明日が来なくても
 もう夕闇は夜を連れて
 やがて夜から朝焼けが覗く
 私が朝を憎んでも
 もう空は明るくなって
 今日を胸に突きつける

 
 朝陽が遠くの街を染めてゆく
 今日はどれだけの命に
 明日は来ないと教えるのだろう
 もう来ない明日を

 あなたに明日が来なくても
 私は想い出を連れて
 この痛みが消えず和らぐことを祈り
 心が明日を恨んでも
 いつまでも歩み続けて
 今日を生きなければならない
 
 いつか歳月が遠くの街のよう
 あなたを眺めるだけの幻想にして
 夢の住人に変えてしまうのだろう
 もういないあなたを

 あなたがいなくても
 生きていけるのがつらい

 あなたの代わりはどこにもいないのに
 私はやがて歳をとりすぎて
 きっとこの痛みも思い出せずに
 それでもいいと思ってしまう
 儚さがあなたを昨日にしてしまう
 それでも
 
 あなたが私を忘れても
 あなたを私は忘れない

 あなたが私を忘れても
 あなたを私は忘れない

 
 忘れない

終わりに触れてしまう時
 私が死んで あなたが死んで
  あの人が死んで あの子が死んで
   そうしてしまう 待つ日を想う
    そんなとき、胸がいっぱいで
     ここにいるのに ここにいない
      そして まるで私がなくなってから
       時間を巻き戻し贈られた最後の瞬間のように
        あなたを抱き締める

木漏れ日を壊さないように
届かないその輪郭をそっと撫でた
消すことはできても
つけることはできない
宿し宿される光たち
どんなに抗っても
揺られて刻々と命を燃やす
世界がはじまった頃から
脈々と繋がる光の旅
果てしなく遠く
限りなく近い光を
私は抱える

あなたの瞳が私を見る
瞳の奥にあなたがいる
私を覗き込むようにして
あなたの永遠とつながる

大丈夫、わかっているから
あなたは永遠になって
私はつかの間の時の中で
あなたの大切なものを守り抜く
いつか私も永遠になるまで

あなたの瞳に吸い寄せられて
たまに時が残酷な仕打ちをする
忘れていたふりをして胸を刺す
傷口からいとおしさが血を流す
そして、あなたの瞳を覗き込む

 
時が私からあなたを奪おうとしても
あなたの瞳の奥には  私がいる

 
 
あなたの瞳が私を見る
瞳の奥にあなたがいる
私を覗き込むようにして
あなたの永遠とつながる

   あの日見た景色は
   風のような ひとつの終わり
   いつか見えなくなってしまっても
   そして忘れてしまっても
   確かにあったと心のどこかで揺れている

  抱えきれないほどに
  息ができないほどに
   抱き寄せたまま
    道連れの終わらない 旅路
 そしていつかに
  命尽きたその先に
        あなたに会えるような気がして

    もう終わりは怖くない

心は
 得体が知れなくて
      不可思議で
         明かな答えもなく
           行き場もわからない
   けれど
  離れているあなたが
      かたちを宿し
         重さを持ち
       輝きを放ち
        香りを立たせ
         温もりを湛えて
     私につながる
 
         道しるべもないのに
      すべてを許して
            先に広がる景色を
         突然に見せて
               導く
      ただ身をゆだねるだけだと
                  囁く

必ず死んでしまうんだ 私も みんなも
終わらない昨日を後悔するよう
死の床はずっとずっと後悔しているのかもしれない(恐ろしさに脱力する)
死は私に語りかけている

瞬間の連なり 一時一時に目を凝らして
最期の瞬間も 眠りにつくよう瞼を下ろすだけかもしれない

解けない神秘のヴェールは
とても簡素な美しさで編み上げられて
私たちを包み込んでいる
消えてはまた生まれゆくまでの間の
優しい静寂

それは最後まで消せない ごまかしてやり過ごすだけ
でも 絶対なんて ない
私たちは結局、目に見えるものだって何も知らない

体の力を抜いて 深呼吸
ひたひたに満ちるまで
空気と自分の境界線が
なくなるまで

     明日は晴れ渡るなんて言わない
     でも、ずっと雨が降るなんてない
     止まない雨はない
     本当はわかっているはず

         心をすくいあげてゆく
 
 
         願いよりも前を
 
 
         見つけてゆくために

強くなりたい
強くなろう
強くなれ

 陽の昇る地平線の上に立つ
 この苦しみの意味に気づく日は来るのかな

変わらないものなんてない 
時を経るごとに 薄れてゆく 微分されてゆく 
          けれど消えることもない

あなたを忘れてゆく
けれど、最後の最後までは
きっと忘れられない
その、何かはわからないけれど、何かが
いつまでも心の隅でくすぶり
明かりをちらつかす
それはいつか寂しさに安らぎを灯す

まるで感覚が麻痺してしまうくらい
 不思議な色に染まった朝焼け
  透明な音が聞こえてくる
   この時が儚く消えても
    またいつかやってくる
     ひとり泣いた夜を越えて
      体をそっと包み込む
       疲れきった私にもう少しだけ
        神様、もう少しだけ
         この朝を覚えておきたいんだ

私が望まなくても必ず朝はやってくる
               光を連れてくる

   あてもなく見上げた空が
   あまりにもきれいだったから
   涙をこらえきれない
   向こう側は、ねえ、
   「そっちはどうですか?」
   ひび割れが少しだけ
   やさしくなる

この先には何が待っているのかな
     これ以上傷つきたくない
     でもこのままではいられない
 
未来は立ち向かうまでの価値があるのかな
どんなに闘っても叶わない願いを閉じ込めて
歯を食いしばってもこの手はその手を掴めずに

     瞳はあなたのいない世界を映す

それでも私はきっと生きてゆく

諦めたもの、その過去に
   ある日ふと乗り越えられない
      私はいきたい その先へ
今度は私が不安を背負って明日を拓く番だから
   そう 私は強くなった
        諦めたもの、過去の、その先へ
  私はいく

目が覚めるとふたつの力強い目が私を見つめていた
せつない やさしい 一瞬の瞬き
時々 私に世界が覆るほどの喜びを与えてくれる

    突然に不意をつかれて
     喉まで混み上げる感情
   呑み込んで
         彼方にある大切なものに
       祈りを捧げる

         心を旅立たせて
           満たされないものへ

  隣り合わせた哀しみに頬を寄せる

           喜び
          哀しみ
         高く、
        高く
       舞い上がれ
      涙
     溜息
    そして
   笑顔
  すべてを
 力に変えて
舞い上がれ

死んだらどうなるんだろう
私にはわからない
でも
あなたに会えるか会えないか 
ふたつにひとつ
私はこの命が終わるのを少し楽しみにしている

 もしも願いが叶うなら
  私がこの世界から消えてしまう時
   想い出も一緒に連れていかせてほしい
    それを辿ってあなたに会いにいく

 悩んで、考えて、理解しようとして
 わからなかった
 でも今ならわかる
 ただ、わかる
 言葉が見つからないけれど
 あふれてくる
 それでいい
 きっと、それでいい
 そう感じる

あなたは確かにここに生きていた

この世界に哀しみしか残らなくなったとしても
 きっとあなたが気づかせてくれる
  朝焼けの色や夕陽の匂いを

    闇があるから光は美しい
                   だから
    明日の私を殺さないで

ちらちらと埃をかぶった記憶から
    ゆっくり しっかり なぞりながら
             感覚を集めてそっと手繰り寄せて
                                抱き締める

手をつないで、つなぎ合う手を変えて
私たちはささやかな温もりに寄り添って、行くんだ
知らない家にそれぞれが帰るまで

絡まった糸を解いてまた見つけては解す
そうして営みは廻ってゆく

ねえ、今 どこにいる?
古すぎる想い出はどれも
ピントを合わせられないカメラみたい
汚れを削ぎ落として
ぼんやりと世界を光で満たす
やわらかい安息の光たち
             あなたのいる場所は
        きっとそんな感じだと思ってる

  絶望して
  先がわからなくても
  歩いていれば
  必ず
  辿り着く場所がある
  立ち止まって
  前を見ないでいたら
  決して
  眺めることのできない
  その場所を
  今は信じている

いつか見つける
心細いこの道の先ずっと先に
強い私が二本足で立っていることを

 たったひとつのことで
  世界が変わることがある
 誰にも気づかれない
       小さな小さな革命

 
 
  ( 私は 今 窓を開けた )